日本大学ランキング2019-2020トップ1%研究者部門 高被引用論文著者(Highly Cited Researchers)

 世界を変えた偉大な学者には、ノーベル賞やフィールズ賞に代表される学術賞が授与される。また、それ以外にも被引用数の多寡が一流の研究者であるかどうか、ひとつの指標となっている。

 日本大学ランキングトップ1%研究者部門では、一流研究者の証でもある高被引用論文著者の在籍数で日本の大学を比較する。

高被引用論文著者(Highly Cited Researchers)とは

 クラリベイト・アナリティクス(旧トムソン・ロイター)は、2014年から毎年、高被引用論文著者(Highly Cited Researchers)を公表している。自然科学および社会科学21の各領域において、過去11年間の被引用数が世界で上位1%に入る論文を複数発表し、後続の研究に多大な影響を与えた学者を選出する。

 高被引用論文著者は、言わば一流研究者の証でもある。リストの中には、権威ある学術賞の受賞者が複数含まれる。さらに将来、その中からノーベル賞等の受賞者が出るかもしれない。

権威ある学術賞の受賞者(抜粋)
主な受賞歴 所属 研究者
ノーベル賞 京都大学 山中伸弥
クラフォード賞 大阪大学 坂口志文
ガードナー国際賞 大阪大学 審良静男

分野横断

 2018年より、「分野横断」という領域が追加された。

 学問の分野というのは、便宜上の区分に過ぎない。たとえば、経済学と医学は全くの別物だが、医学と生物学は隣接した領域である。1人の研究者が複数の領域にまたがって業績をあげることは珍しいことではない。

 分野横断というのは、特定の分野においては選出の基準を満たさなかったものの、学問の区分をなくした場合には世界の上位1%であった、というものである。

主要国際賞部門の欠点とトップ1%研究者部門の利点

 主要国際賞部門では、国際的に有名な学術賞の受賞者数で日本の大学を分析した。しかしながら、京都大学の山中伸弥さんや名古屋大学の天野浩さん等、一部に現職の研究者もいるものの、基本的には過去の実績が評価対象となる。

 一方、トップ1%研究者部門では、(一部離職者もいるが)現在所属している一流研究者の数を対象とするため、現時点における大学の実力が評価できる。

大学別 高被引用論文著者一覧

 国内主要41大学に所属する高被引用論文著者の一覧である。期間は2014~2018年の5年分。選出分野も示されているため、各大学、どの分野に強みを持つのか、一目瞭然である。

東京大学

東京大学 高被引用論文著者
学問分野 研究者 18 17 16 15 14
宇宙科学 嶋作一大        
土居守      
福来正孝        
化学 相田卓三        
堂免一成      
材料科学 染谷隆夫        
植物・動物学 浅見忠男    
篠崎和子
中嶋正敏        
西澤直子        
福田裕穂  
生物学・生化学 水島昇        
微生物学 河岡義裕        
物理学 内田愼一      
芝内孝禎        
高木英典        
十倉好紀        
分子生物学・遺伝学 水島昇
免疫学 佐藤慎太郎        
谷口維紹
中江進    
柳井秀元        
薬理学・毒性学 片岡一則    
分野横断 相田卓三        
有田亮太郎        
岩佐義宏        
染谷隆夫        
渡部雅浩        
合計 10 7 7 9 19

 東京大学には、一流の研究者が10領域と分野横断に満遍なく在籍しており、レベルの高さが窺える。

大阪大学

大阪大学 高被引用論文著者
学問分野 研究者 18 17 16 15 14
化学 佐藤哲也        
茶谷直人      
三浦雅博
材料科学 関谷毅        
植物・動物学 柿本辰男    
松田史生        
生物学・生化学 審良静男    
吉森保        
物理学 安藤陽一        
分子生物学・遺伝学 吉森保        
免疫学 審良静男
石井健        
改正恒康        
加藤博己        
坂口志文
佐藤慎太郎    
竹田潔  
邊見弘明        
山本雅裕  
臨床医学 審良静男        
木原進士        
船橋徹        
分野横断 関谷毅        
合計 6 8 8 9 17

 大阪大学には、一流の免疫学者が突出して多い。それもそのはず、免疫学世界一の研究機関は、ここ大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)なのだ。他の大学・分野と比べて、その差は歴然。これこそが真のワールドクラスである。

 2014年から2018年まで連続して選出されている免疫学者の坂口志文さんは、クラフォード賞の受賞者である。同じく、審良静男さんはガードナー国際賞の受賞者であり、論文の被引用数世界一の学者でもある。2014年には、異例とも言える生物学・生化学、免疫学、臨床医学の3分野で選出されている。

東北大学

東北大学 高被引用論文著者
学問分野 研究者 18 17 16 15 14
材料科学 井上明久        
陳明偉        
植物・動物学 佐藤修正
花田篤志      
山口信次郎  
物理学 齊藤英治      
佐藤宇史        
高橋隆        
薬理学・毒性学 寺崎哲也        
分野横断 大野英男        
高橋三郎        
瀧宮和男        
バウアー・ゲリット        
本間格        
山本雅之        
合計 9 3 3 2 7

 材料科学で有名な東北大学だが、高被引用論文著者は、大阪大学の免疫学とは比較にならないほど少ない。しかしながら、植物・動物学、物理学で各3名、分野横断で6名が選出され、人数では京都大学を上回った。

京都大学

京都大学 高被引用論文著者
学問分野 研究者 18 17 16 15 14
化学 北川進
植物・動物学 鹿内利治      
山口信次郎        
生物学・生化学 金久實  
五斗進        
山中伸弥        
物理学 松田祐司      
免疫学 加藤博己    
竹内理
野村尚史        
藤田尚志  
分野横断 寺内良平        
山中伸弥        
合計 7 5 5 7 7

 国際賞受賞者を多数輩出してきた京都大学だが、高被引用論文著者はかなり少ない。2012年にノーベル賞を受賞した山中伸弥さんが2015年に生物学・生化学、2018年に分野横断で高被引用論文著者に選出されている。

名古屋大学

名古屋大学 高被引用論文著者
学問分野 研究者 18 17 16 15 14
化学 伊丹健一郎      
植物・動物学 上口(田中)美弥子      
榊原均  
松岡信    
物理学 野尻伸一
合計 3 3 3 4 3

 ノーベル賞受賞者を多数輩出した名古屋大学も同様、高被引用論文著者は少ない。5名中3名が植物・動物学者であった。

千葉大学

千葉大学 高被引用論文著者
学問分野 研究者 18 17 16 15 14
植物・動物学 齊藤和季
免疫学 植松智  
米山光俊        
薬理学・毒性学 設楽悦久        
合計 1 2 2 2 4

上記以外の大学

上記以外の大学 高被引用論文著者
学問分野 研究者 18 17 16 15 14
東京理科大学
物理学 辻川信二        
免疫学 岩倉洋一郎
分野横断 工藤昭彦        
合計 2 1 1 1 2
東京工業大学
化学 前田和彦        
物理学 細野秀雄      
分野横断 神谷利夫        
合計 3 0 0 0 1
岡山大学
植物・動物学 馬建鋒  
山地直樹    
合計 1 2 2 2 0
九州大学
地球科学 竹村俊彦
分野横断 安達千波矢        
合計 2 1 1 1 1
慶應義塾大学
計算機科学 冨田勝        
免疫学 本田賢也
合計 1 1 1 2 1
山形大学
材料科学 城戸淳二
分野横断 笹部久宏        
合計 2 1 1 1 1
順天堂大学
薬理学・毒性学 平松啓一      
分野横断 八木田秀雄        
合計 1 0 1 1 0
新潟大学
生物学・生化学 小松雅明        
分子生物学・遺伝学        
合計 0 0 0 1 1
広島大学
宇宙科学 高橋弘充        
水野恒史        
合計 0 0 2 0 0
大阪市立大学
化学 佐藤哲也  
合計 1 1 1 1 0
早稲田大学
工学 滝沢研二    
分野横断        
合計 1 1 1 1 0
東京農工大学
植物・動物学 梅澤泰史    
合計 1 1 1 0 0
徳島大学
植物・動物学 刑部祐里子    
合計 1 1 1 0 0
北海道大学
免疫学 橋本大吾    
合計 1 1 1 0 0
愛媛大学
植物・動物学 佐久間洋      
合計 0 0 1 1 0
首都大学東京
物理学 水口佳一        
合計 0 1 0 0 0
信州大学
化学 堂免一成        
合計 1 0 0 0 0
鳥取大学
植物・動物学 岡本昌憲        
合計 0 0 1 0 0

 日本は植物・動物学、免疫学に強い一方、主要大学の中に数学、経済学・経営学等1人も高被引用論文著者がいない分野もあった。

日本大学ランキング2019-2020トップ1%研究者部門

 日本大学ランキング2019-2020トップ1%研究者部門である。得点は、2014~2018年の高被引用論文著者数を大学の規模で正規化して算出している。

日本大学ランキング2019-2020トップ1%研究者部門
順位 大学 区分 得点
1 大阪大学 国立 100.00
2 東京大学 国立 74.68
3 東北大学 国立 53.73
4 京都大学 国立 49.63
5 東京理科大学 私立 45.18
6 千葉大学 国立 39.01
7 名古屋大学 国立 36.09
8 山形大学 国立 30.35
9 東京農工大学 国立 25.40
10 東京工業大学 国立 22.85
11 岡山大学 国立 20.49
12 徳島大学 国立 18.40
13 大阪市立大学 公立 17.47
14 順天堂大学 私立 14.87
15 新潟大学 国立 14.13
16 慶應義塾大学 私立 14.11
17 九州大学 国立 12.36
18 鳥取大学 国立 12.08
19 愛媛大学 国立 11.79
20 広島大学 国立 10.06
21 首都大学東京 公立 9.32
22 信州大学 国立 7.94
23 早稲田大学 私立 6.93
24 北海道大学 国立 6.20
大阪府立大学 公立 0.00
鹿児島大学 国立
金沢大学 国立
北里大学 私立
岐阜大学 国立
近畿大学 私立
熊本大学 国立
群馬大学 国立
神戸大学 国立
筑波大学 国立
東京医科歯科大学 国立
富山大学 国立
長崎大学 国立
日本大学 私立
三重大学 国立
山口大学 国立
横浜市立大学 公立

日本大学ランキング2020トップ1%研究者部門

 日本大学ランキング2019-2020トップ1%研究者部門第1位は、免疫学世界1位のIFReC擁する大阪大学であった。約25点差で、2位には安定したレベルの高さを示した東京大学がランクイン。京都大学を上回り、3位に入ったのは東北大学である。

 東京理科大学は全体5位と、私立大学としては快挙。6位に千葉大学、名門・名古屋大学は7位、山形大学は8位と健闘。東京工業大学は10位で、大阪大学とは格の違いを認識せざるを得ない結果となった。九州大学は17位、北海道大学は24位であった。

 神戸大学や筑波大学をはじめ、ただ1人の高被引用論文著者もいない大学は41校中17校にも及んだ。