THE世界大学ランキング日本版が意味不明な件

 THE世界大学ランキング日本版2020の総合ランキング上位10校である。

THE世界大学ランキング日本版2020 総合ランキング
順位 大学 区分 得点
総合 教育
リソ
ース
教育
充実
教育
成果
国際
1 東北大学 国立 83.0 84.1 80.6 96.6 73.9
2 京都大学 国立 81.5 83.4 78.7 98.4 69.1
=3 東京大学 国立 81.2 86.5 79.8 94.1 64.0
=3 東京工業大学 国立 81.2 80.1 80.8 92.8 74.5
5 九州大学 国立 79.7 76.4 79.9 97.4 70.9
6 北海道大学 国立 79.6 73.8 83.4 94.1 72.3
7 名古屋大学 国立 79.5 78.2 80.5 96.1 66.9
8 大阪大学 国立 78.9 78.0 77.2 97.9 68.1
9 筑波大学 国立 77.7 74.1 84.9 94.4 59.6
10 国際教養大学 公立 77.2 52.8 93.0 71.0 100.0

「わぁ、すごい。東北大学が1位か。京大・東大より上じゃん」

とでも思っただろうか。確かにパッと見では、旧帝国大学と東京工業大学が8位までを占拠しているし、ちゃんとした大学ランキングのように感じるかもしれない。しかし、細部をしっかり検討すると、その認識が誤りであることに気付く。THE世界大学ランキング日本版がいかに無意味であるか、今から証明してみせる。

THE世界大学ランキング日本版とは

 THE世界大学ランキング日本版は、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education、THE)が算出する日本の大学ランキングである。2017年から開始され、今回で4回目の発表となる。2020年版では、国立大学67校、公立大学44校、私立大学167校の計278校がランキング対象となった。

 「THE世界大学ランキング」と「THE世界大学ランキング日本版」は、異なるランキングである。前者は世界の大学ランキングであり、「大学院の研究力を重視している」一方、後者は日本の大学ランキングであり、「学部の教育力に焦点を当てている」とのこと。日本版では、日本の教育事情に即したランキングになるようにと、ベネッセグループが助言や調査補助を行っている。

タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの大学ランキング
ランキングの種類 対象 重視する内容
THE世界大学ランキング 世界の大学 大学院の研究力
THE世界大学ランキング日本版 日本の大学 学部の教育力
日本では長らく、入試難易度、いわゆる偏差値が高校生の大学選び、また企業の採用にも影響を与えてきました。しかし近年は、入学した学生をどれだけ成長させて社会に送り出すか、つまり入学後の教育力が、高校生や保護者、社会から注目されています。「THE世界大学ランキング 日本版」(以下、日本版)はその関心に応えるものになり得るでしょう。

証明方針

 THE世界大学ランキング日本版は、総合ランキングの他に、4つの分野別ランキングが公表されている。

THE世界大学ランキング日本版

  • 総合ランキング
  • 分野別ランキング
    • 教育リソースランキング
    • 教育充実度ランキング
    • 教育成果ランキング
    • 国際性ランキング

 以下の文はタイムズ・ハイヤー・エデュケーションからの引用だが、長いので読み飛ばしてもらって構わない。要約すると、

「分野別ランキングも参考にしてね」

ということである。

高校現場における、日本版の使い方を考えてみましょう。既に志望校が定まっている生徒にとっては、その大学がランキングに入っていれば、特徴を再確認するために役立ちます。分野別のスコアを参考に、具体的にどんな点が優れているのかを調べることによって、大学への理解が深まるでしょう。複数の候補の中から第1志望校や併願校をどこにするか迷っている生徒にとっては、ランクインしているかどうかが、またランクインしていればそのスコアが、判断材料の一つになるかもしれません。一方、まだ志望校が見つかっていない生徒にとっては、気になる大学を見つけるきっかけになります。進学先に求める条件に近い分野のランキングを調べ、ランクイン大学を優先的に見ていくとよいでしょう。また、「そもそも偏差値以外にどんな視点で大学を見ればいいかわからない」という生徒については、指標の4分野11項目そのものが大学を評価する視点として参考になります。現在、各大学は2020年度の入試改革に向けて多面的・総合的評価の導入を進めています。日本版が大学選びに使われるようになれば、偏差値一辺倒の時代から、多面的・総合的に大学を評価する時代に変わっていくのではないでしょうか。

 実際、見る人はそういないだろう。だが、しかし、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションがここまで言うので、お望み通り、今回は分野別ランキングをしっかり観察させてもらうことにしよう。

 4つの分野別ランキングは、さらに16の項目に細分化される。各項目の得点については公表されていないが、どういった目的で採用され、どういった指標であるのか、概要が示されているので、その妥当性についても同時に検討する。これが証明方針である。この記事はとても長いが、証明自体は一瞬で終わる。なお、引用文に「4分野11項目」とあるが、項目が11個というのは2017年版の話である。

ランキング指標

 まずは、きっと誰も見ないであろう4分野16項目で構成されるランキング指標について簡単に確認しておく。詳しい説明は分野別ランキングを示しながら行うので、ここはさっと見るだけで十分である。

 各ランキング指標が妥当であるかは、星の数によって評価する。星が多ければ適切、少なければ不適切であると考える。

星の数と妥当性
↑適切 星5個 ★★★★★
  星4個 ★★★★☆
星3個 ★★★☆☆
星2個 ★★☆☆☆
星1個 ★☆☆☆☆
↓不適切 星0個 ☆☆☆☆☆
ランキング指標
分野 項目 妥当性 配点
内訳 合計
教育リソース 学生一人あたりの資金 ☆☆☆☆☆ 8% 34%
学生一人あたりの教員比率 ★★☆☆☆ 8%
教員一人あたりの論文数 ★★★☆☆ 7%
大学合格者の学力 算出不能 6%
教員一人あたりの競争的資金獲得数 ★★☆☆☆ 5%
教育充実度 学生調査 教員・学生の交流、協働学習の機会 ★☆☆☆☆ 6% 30%
授業・指導の充実度 6%
大学の推奨度 6%
高校教員の
評判調査
グローバル人材育成の重視 ☆☆☆☆☆ 6%
入学後の能力伸長 6%
教育成果 企業人事の評判調査 ☆☆☆☆☆ 8% 16%
研究者の評判調査 ☆☆☆☆☆ 8%
国際性 外国人学生比率 ☆☆☆☆☆ 5% 20%
外国人教員比率 ☆☆☆☆☆ 5%
日本人学生の留学比率 ☆☆☆☆☆ 5%
外国語で行われている講座の比率 ☆☆☆☆☆ 5%
合計 100% 100%

分野別ランキング

 では、4つの分野別ランキングの結果上位10大学を眺めつつ、各ランキング指標について詳しく解説していこう。

教育リソース

 教育リソースは、以下の5項目で構成される。タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによると、

どれだけ充実した教育が行われている可能性があるかを表している

らしい。

教育リソースの指標
項目 妥当性
学生一人あたりの資金 ☆☆☆☆☆
学生一人あたりの教員比率 ★☆☆☆☆
教員一人あたりの論文数 ★★★☆☆
大学合格者の学力 算出不能
教員一人あたりの競争的資金獲得数 ★★☆☆☆
教育リソースランキング
順位 大学 区分 得点
教育
リソ
ース
総合 総合 教育
リソ
ース
教育
充実
教育
成果
国際
1 =3 東京大学 国立 81.2 86.5 79.8 94.1 64.0
2 =29 東京医科歯科大学 国立 63.6 84.2 58.2 29.4 64.0
3 1 東北大学 国立 83.0 84.1 80.6 96.6 73.9
4 2 京都大学 国立 81.5 83.4 78.7 98.4 69.1
5 111-120 京都府立医科大学 公立 47.8-48.8 82.8 19.4
6 121-130 兵庫医科大学 私立 46.8-47.6 81.2 19.4
7 101-110 浜松医科大学 国立 48.9-49.7 80.6 19.4
8 =3 東京工業大学 国立 81.2 80.1 80.8 92.8 74.5
9 101-110 滋賀医科大学 国立 48.9-49.7 78.6 19.4 37.3
10 99 札幌医科大学 公立 50.0 78.5 50.2 19.4

 さて、みな気付いたことだろう。気付かないはずがない。そう、教育リソースは、異常なまでに医科大学が優遇されているのだ。10校中5校が無名の医科大学であり、2位の東京医科歯科大学も含め、6校が医学系の大学である。もはや正気の沙汰ではないことは誰の目から見ても明らかだ。ということで、証明終了。というより、もはや証明するまでもない。のだが、一応話は続けよう。

学生一人あたりの資金

 学生一人あたりの資金について、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは、

この項目からは、大学が学生の教育にかけられる費用がどれくらいあるかを測ることができます。大学が多くの資金を持っているほど、より良い施設・設備の導入が進んだり、教育改革などに投資したりすると考えられるためです。

と主張する。具体的には、

経常収入÷在籍学生数

で計算される。

 経常収入とは、簡単に言うと、企業の売上高に相当する。そして、医学部がある大学は、医学部附属病院を傘下に持つ。もう、お分かりだろう。そう、大学病院の売上は莫大なのだ。しかも、分母が在籍学生数である。もう、お分かりだろう。医学部の定員は、医学科と保健学科を合わせて、約200名。そう、医科大学の「学生一人あたりの資金」は、とんでもない値が弾き出されるのだ。

 学校法人の会計基準では、利益に相当するのが経常収支差額である。たとえば、2014年に(またしても)医療事故を起こした挙句、隠蔽までした付けが回った東京女子医科大学は、2014~2016年度3期連続赤字、2015年度には34億円の赤字を叩き出した。あるあるだ。それで、一体どうやって学生に還元すると言うつもりなのだろうか。不思議な論理だこと。もちろん星は0である。

学生一人あたりの教員比率

 学生一人あたりの教員比率について、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは、

学生一人あたりの教員比率が高いほど、少人数教育が実現し、学生一人ひとりに寄り添った指導を期待できるといえます。

と述べている。具体的には、

教員数÷在籍学生数

で計算される。

 タイムズ・ハイヤー・エデュケーションの主張にも一理ある。しかし、学生数に対して教員数が多い国立大学でも、大教室で行われる講義は多いので、さほど関係ない気もする。そして、どの教官から指導を受けるかということに比べれば、学生一人あたりの教員比率というのは些末なことである。ということで、星2つ。

 ちなみに、これも医科大学に超絶有利な項目である。医学部は、学生一人あたりの教員数が他の学部と比較にならないくらい多いのだな、これが。

教員一人あたりの論文数
教員一人あたりの競争的資金獲得数

 教員一人あたりの論文数および競争的資金獲得数について、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは、

 教員一人あたりの論文数および競争的資金獲得数が多いほど、その大学で研究が盛んに行われていることを表し、学生は教授から最先端の研究について学ぶことができると考えられます。

と述べている。それぞれ

論文数÷教員数
競争的資金制度の大学別獲得件数÷教員数

で計算される。

 大学を評価する際は、論文数よりも被引用数が使われることが多い。なぜなら、しょぼい論文ばかり出していても仕方がないからだ。とは言え、論文数と被引用数はおおむね比例関係、つまり論文数が多い大学は被引用数も多い傾向にある。本来であれば、被引用数の方が好ましいが、悪い指標とも言えない。ということで、星3つ。

 競争的資金獲得数も同様で、数よりも金額の方が明らかに重要である。ということで、こちらは星2つ。

 ついでに言うと、これらも医科大学に半端なく有利な項目である。論文というのは、約半分が医学系なのだ。普通は分野間で調整をかけるが、きっと何もしていないだろうな。特に何の記載もなかった。しっかり調整した、という前提での星3つである。

大学合格者の学力

 大学合格者の学力に関して、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは完全スルーであったが、ベネッセ(Between情報サイト)に以下の説明書きがあった。

「どのような学力レベルの学生と共に学ぶ環境か」を教育リソースとして捉える。
ベネッセ総合学力テストにおける大学合格者の学力データを使用。

 確かに、周りの学生が優秀である方が学習環境として好ましい。しかし、その説明には納得できない。理由は2つ。

 1つ目。国公立大学は一般入試が主流であるため、合格者の学力を推定することは比較的容易だろう。しかし、私立大学の学生は、約半分が推薦入試やAO入試を経て入学する。それは早慶とて例外ではない。学力試験を受けずに合格した者の学力をどのように推測して、データをどのように処理するのか、不透明である。

 2つ目。話が矛盾している。自分たちで、教育リソースについて「その大学でどれだけ充実した教育が行われている可能性があるかを表す」と言っているのにもかかわらず、学生の学力で大学の教育力を評価するのは支離滅裂である。

 教育とは、教え育むことである。入学時に勉強ができようができまいが、卒業までに学力を向上させることが大学の役割であり、どれほど向上させることができたかが、強いて言うなら、教育力なのではないだろうか。

 「偏差値一辺倒ではなく、教育力に焦点を当てた新しいランキングを作ったぞ」と言う割には、偏差値入れちゃうんだ。もはや意味不明なので、妥当性については算出不能。

 自明だが、これも医科大学にとてつもなく有利な項目である。

教育リソースランキングまとめ

 ということで、教育リソースに含まれる項目は全て医科大学のためにあるようなものである。その結果、上位10校中6校が医科大学という謎ランキングとなった。ちなみに、教育リソースランキング6位の兵庫医科大学は、医学部医学科しかない。私大で唯一トップ10にランクインしているのは、おそらくそれが原因である。

教育充実度

 教育充実度は、大きく分けて学生調査と高校教員の評判調査から成る。タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによると、

どれだけ教育への期待が実現されているかを表している

らしい。

教育充実度の指標
項目 妥当性
学生調査 ★☆☆☆☆
高校教員の評判調査 ☆☆☆☆☆
教育充実度ランキング
順位 大学 区分 得点
教育
充実
総合 総合 教育
リソ
ース
教育
充実
教育
成果
国際
1 10 国際教養大学 公立 77.2 52.8 93.0 71.0 100.0
2 11 国際基督教大学 私立 74.3 52.8 90.5 60.6 97.6
3 9 筑波大学 国立 77.7 74.1 84.9 94.4 59.6
4 =21 立命館アジア太平洋大学 私立 66.2 33.7 84.3 60.4 99.0
5 6 北海道大学 国立 79.6 73.8 83.4 94.1 72.3
6 20 上智大学 私立 66.5 43.4 82.8 66.3 81.3
7 =36 神田外語大学 私立 61.2 35.8 82.6 55.5 76.8
8 =21 東京外国語大学 国立 66.2 43.3 81.5 66.8 81.9
9 =3 東京工業大学 国立 81.2 80.1 80.8 92.8 74.5
10 1 東北大学 国立 83.0 84.1 80.6 96.6 73.9

 教育充実度ランキングでは、意識高い系の大学および外国語大学・外国語教育に力を入れている大学が上位を占めている。なぜ、このような結果となったのか、考えられる原因を述べていく。

学生調査

 学生調査は、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによると、

大学の教育について、受け手側の学生が、実際にどう感じているかを調査しています。

とのこと。調査は、学生が以下の質問に回答する形式で行われる。

「学生調査」の項目
教員・学生の交流、協働学習の機械
1 あなたの大学における学習経験の中で、教授陣や先生方と交流する機会はどの程度ありますか。
2 あなたの大学では、協同学習(協働学習)の機会はどの程度ありますか。
授業・指導の充実度
3 あなたの大学の指導では、クリティカル・シンキングのスキルの成長が支援される機会がどの程度ありますか。
4 あなたの大学の指導では、学んだことをじっくり検討したり、学んだことを相互に結び付けたりすることを支援される機会がどの程度ありますか。
5 あなたの大学の指導では、学習内容を実社会に応用することが支援される機会がどの程度ありますか。
6 あなたがこれまで大学で受講した授業は、あなたにとって挑戦/やりがいのあるものでしたか。
大学の推奨度
7 あなたの友人や家族が大学に行くことを検討していたら、どの程度あなたの通う大学を勧めますか。あなたの大学での経験をもとに回答してください。

※質問項目にそれぞれ0~10点をつける形式で回答

 どうだろう。こんな質問票を受け取ったら。私なら、迷わず紙飛行機にする。とにかく質問の意味がわからない。いや、正確には、言いたいことは理解できなくもないが、質問が漠然としていて非常に答えにくく、見事に人をイラッとさせてくれる。特に3番目の

「あなたの大学の指導では、クリティカル・シンキングのスキルの成長が支援される機会がどの程度ありますか。」

などは本当に酷い。きっと英語を和訳したのだろうなぁ、ということがひしひしと伝わってくる酷い日本語である。元の英文を完全再現できそうだ。こんなものを英語の試験で提出してきたら、当然0点である。

普通・意識低い系の大学生:
「質問の意味がわからない。面倒だから全部5にしとくか」
意識高い系の大学生:
「質問の意味はわからない。だけど、オレの大学生活は満開だ。全部10」

といった具合で、学生が適当に点数を付けていった結果、意識高い系の大学が上位に並んだのではないか、という疑念を抱かせる。

 確かに、学生が実際にどう感じているか、ということは重要なことだろう。しかし、何の比較対象もない純粋に主観的な意見を大学ランキングの指標とするには無理があるように感じる。よって、星は1つとする。

高校教員の評判調査

 高校教員の評判調査は、以下の2項目で評価される。

  • グローバル人材育成の重視
  • 入学後の能力伸長

タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによると、

 教育充実度の指標項目のうち、高校教員の評判調査は、「大学に関する印象調査」から抜粋してスコア化したものです。

 高校の進路担当教員は、自校の卒業生からさまざまな情報を集め、大学進学をめざす生徒に志望校選択のアドバイスをしています。そんな教員たちの大学の見方を調査することにより、大学教育への期待が実現できている大学かどうかを推し測ることができます。

だそうだ。

 まず、卒業後わざわざ母校にまで行って、高校教員と大学教育について語り合う人がどれだけいるのだろうか。私は一度もない。高校教員に大学教育の何がわかると言うのだろう。

 次に、「グローバル人材育成の重視」とは、何の話だろう。大学としても、まともな日本語が使えない連中に「グローバル云々」言われたくはないだろう。そして、「入学後の能力伸長」とは、高校教員はどうやって知るのだろう。卒業生に試験でも受けさせるのだろうか。

 ともあれ、「グローバル云々」で調査していれば、外国語大学や外国語教育に熱心な大学が上位に入るのも当然の結果であろう。星0個。

教育成果

 教育成果は、以下の2項目で構成される。タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによると、

どれだけ卒業生が活躍しているかを表している

らしい。

教育成果の指標
項目 妥当性
企業人事の評判調査 ☆☆☆☆☆
研究者の評判調査 ☆☆☆☆☆
教育成果ランキング
順位 大学 区分 得点
教育
成果
総合 総合 教育
リソ
ース
教育
充実
教育
成果
国際
1 2 京都大学 国立 81.5 83.4 78.7 98.4 69.1
2 8 大阪大学 国立 78.9 78.0 77.2 97.9 68.1
3 5 九州大学 国立 79.7 76.4 79.9 97.4 70.9
4 1 東北大学 国立 83.0 84.1 80.6 96.6 73.9
5 7 名古屋大学 国立 79.5 78.2 80.5 96.1 66.9
6 9 筑波大学 国立 77.7 74.1 84.9 94.4 59.6
=7 =3 東京大学 国立 81.2 86.5 79.8 94.1 64.0
=7 6 北海道大学 国立 79.6 73.8 83.4 94.1 72.3
9 14 慶應義塾大学 私立 70.2 60.8 76.3 93.7 58.2
10 13 早稲田大学 私立 71.5 52.7 79.3 93.0 74.6

 教育成果ランキングでは、ご覧の通り、有名大学が揃ってランクイン。

企業人事の評判調査
日経HRの「企業人事担当者から見た大学のイメージ調査」のデータを使用。これは、企業の人事担当者に新卒社員として採用実績のある大学を多い順に10校まで挙げてもらい、「学生のイメージ」と「大学の取り組みのイメージ」を聞いた、というこれまた見事にふわっとした調査である。
研究者の評判調査
THE世界大学ランキングのために各国の研究者を対象に実施した評判調査の結果から、日本の研究者が日本の大学について評価したデータを抽出。「素晴らしい教育をしていると思う大学」を最大15大学挙げてもらい、大学ごとの得票数を合算。

 研究者が研究について評価するということはよくあることで、それは適切な手法である。しかし、研究者が教育に関して評価するというのは適切なのだろうか。

 企業人事の評判調査にせよ、研究者の評判調査にせよ、結局は、有名大学の名前が挙げられるだけなのではないだろうか。素晴らしい教育をしていても、知らない大学の名前なんて挙げようがないのだから。ということで、いずれも星は0個。

国際性

 国際性は、以下の4項目で構成される。タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによると、

どれだけ国際的な教育環境になっているかを表している

らしい。

教育リソースの指標
項目 妥当性
外国人学生比率 ☆☆☆☆☆
外国人教員比率 ☆☆☆☆☆
日本人学生の留学比率 ☆☆☆☆☆
外国語で行われている講座の比率 ☆☆☆☆☆
国際性ランキング
順位 大学 区分 得点
国際
総合 総合 教育
リソ
ース
教育
充実
教育
成果
国際
1 10 国際教養大学 公立 77.2 52.8 93.0 71.0 100.0
2 =21 立命館アジア太平洋大学 私立 66.2 33.7 84.3 60.4 99.0
3 11 国際基督教大学 私立 74.3 52.8 90.5 60.6 97.6
4 151-200 大阪女学院大学 私立 38.3-44.8 51.3 89.4
5 201+ 梅光学院大学 私立 18.3-38.1 86.8
6 =75 創価大学 私立 54.0 37.7 53.6 49.8 85.4
7 51 神戸市外国語大学 公立 58.0 34.2 68.3 55.6 84.9
8 40 福岡女子大学 公立 60.3 49.4 71.9 32.1 83.8
9 90 名古屋外国語大学 私立 51.7 65.1 37.2 83.7
10 =62 関西外国語大学 私立 55.2 68.4 56.0 83.2

 国際性ランキングは、外国語大学や外国語教育に力を入れている大学、そして無名大学が入り乱れているのが特徴。指標を見れば、そうなることは容易に想像付く。

外国人学生比率
外国人教員比率

 外国人学生比率と外国人教員比率について、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは、次のように説明する。

 これらの指標は、大学のキャンパスがどのくらい国際的な学修環境であるかを示しています。外国人学生や教員の比率が高いほど、ネイティブとのキャンパス内でのコミュニケーションの機会も多く、ディスカッションなどを通して多様な文化的背景を持つ人々とコミュニケーションできる環境が整っているといえます。

だから何だと言うのだろう。「多様な文化的背景を持つ人々とコミュニケーション」するために大学へ行くわけではない。

 計算式はそれぞれ以下の通り。

在籍外国人学生数÷在籍学生数、
在籍外国人教員数÷教員数。

外国語で行われている講座の比率

 外国語で行われている講座の比率について、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは、次のように説明する。

 この指標からは、大学でどのくらい実用的な外国語の運用能力を向上させることができる可能性があるかを測ることができます。

「実用的な外国語の運用能力を向上させる」のは、駅前留学の役目である。

 計算式は以下の通り。

外国語で行われている講座数÷全講座数。

日本人学生の留学比率

 日本人学生の留学比率について、タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは、次のように説明する。

 この指標からは、大学の留学に関する制度が、学生にとってどのくらい利用しやすいものになっているかを測ることができます。

日本の大学は留学予備校ではない。

 計算式は以下の通り。

日本人学生の留学生数÷在籍学生数。

国際性まとめ

 外国人・留学・外国語での授業、これらの比率が高いことが大学の教育力なのだろうか。そんな訳ないだろう。タイムズ・ハイヤー・エデュケーションは、日本の大学を何だと思っているのだ。

まとめ~教育力とは~

 改めて述べると、THE世界大学ランキング日本版は教育力のランキングだそうだ。大学の研究力については、たとえば、論文の被引用数であったり、ノーベル賞の受賞者数であったり、数値化することは容易である。しかし、教育力とは何だろう。どのように評価したら良いのだろう。

 もしも教育力というもので正しく大学をランク付けできたとしたら、本当に総合ランキング8位までを旧帝国大学と東京工業大学が占めるのだろうか。自由を謳歌する京都大学は本当に教育力2位なのだろうか。無名大学がもっと上位にランクインしていてもおかしくはないように思える。

 教育力をどのように測定するか、ということは難しい問題だと思う。しかし、THE世界大学ランキング日本版には、

「なんとなくそれっぽいランキングに仕上げとけ!どうせ、みんな総合ランキングしか見ないだろ」

というような悪意すら感じる。

「今年の1位は東京大学、今年は京都大学、今年は東北大学」

THE世界大学ランキングなんてものは、適当に順位を変動させて、しょせんはただのエンターテイメントである。さて、このランキングは何の役に立つのであろうか。